怒ってること・悲しいこと
先日買った本がある。それは前にも書いたけれど。
思っていてもなかなか言えないこと、”そうそう”って共感するポイントがたくさんあった。ネット上で他の人の感想を見てても感じる。
その中で・・・、私の立ち位置から見て一番ズドンときたシーンがある。
それは4話目の中で書かれている。
結婚を決めた男女がいる。
彼の方から、
子どもを産むんだったら早い方がいいよね。
という話があったことから、彼女は現実的に考えてブライダルチェックの相談を彼にする。
彼:歳だもんな。万が一に備えるっていいと思うよ。
彼女:だよね!予約するから一緒に・・・
彼:えっ?何で俺?
「ずっと独身でいるつもり?/おかざき 真里」より。このシーンが突き刺さる。 pic.twitter.com/ARhlS8cGlc
— うさ (@asuka_repro2) 2016, 1月 8
あー・・・・・。
でたよ、”何で俺?”発言。
まさに他人事。
この彼は、彼女がブライダルチェックするのはいいと思っているのに”一緒に”という展開になると”何で俺?”となっている。
本当にガッカリする。
あのさ、検査を受けない状況で自分の精子は問題ないなんてわかる人はこの世界に誰1人いないんだよ。
このシーンで、子どもが授かるかどうかは女性の問題だという認識が彼の中でデフォルトになっているということが透けて見えるんだよ。
これは漫画だけじゃない。
私が最悪だと思うのは、こういう感覚の人が実際に一定数いるってことだ。それが現実としてわかってしまったから、私は怒っている。
(みんながそう思っていると言いたいわけじゃない。自分のこととして考えられる男性もいる。自分のパートナーがどのタイプなのかが重大なんだよ。)
そして悲しことは・・・。
この漫画のようなシーンが現実として起こった場合に、女性側が”そうだよね・・・”みたいに暗黙の了解をしちゃうところなんだよ。それが私はとても悲しい。
そう思っちゃう背景は、年齢とともに妊娠しにくいとか、体形のことや(痩せすぎ)やタバコの話題になると将来の妊娠や生まれてきた子供に影響するとか、そういう女性側の情報ばかりがオープンに語られてるからなのかもしれない。要するにその耳に入りやすい情報がどんどん蓄積されて”私の問題なんだ・・・”ってすり込まれている人がたくさんいる。
もともとそうやってすり込みがあるから、パートナーに強く言えないんだよ。自分の問題に彼を巻き込んでしまって申し訳ない、という解釈をしてしまう人もいる。相手を傷つけちゃうんじゃないかなと気にする人もいるだろうし。だから、引き下がるしかないんだよ・・・。
個人差はあるだろうが、”私に問題があるかも”と思い込んでいるタイプの女性と”何で俺?”って感覚がデフォルトのタイプの男性の組み合わせが一番大変かもしれない。
1人で妊娠できるわけないんだよ。1人がどんなに気をつけても、それが必ずしも妊娠につながるわけじゃないんだよ。
本当は、女性側の要因と男性側の要因が同じ熱量で啓発されていかなければならないのに。子供のことについては、子どもを望んでいるパートナー2人が同じベクトルで相談し合う必要があるのに。
でも、どうしても”妊娠する側”ばかりの情報が注目されてしまっている。その熱量の差が、結婚した時の夫婦の認識・知識の差につながっていると私は思う。
中には”なんで私だけ病院に行かなきゃならないの?”と疑問を抱えながら、それでもパートナーに言えなくて我慢してる女性がたくさんいるんだよ。それが想像できるから私は歯がゆい。その上なかなか妊娠しなければ、年齢も上がってますます女性側の問題と捉えられたりする。さらに悪循環過ぎるよ・・・。
もちろんそれに気づいている男性もいる。男性不妊がわかって不妊治療してる夫婦もたくさんいるのだから。でもその男性たちは”沈黙”してことが多い。こういう問題点を語るということは、自分に不妊の原因があるということをオープンにすることになるから。
沈黙され、男性不妊が現実にそこにある問題なのになかなか見えない状況であることはnoteにも書いてる。
さらに言えば、医療システムの問題もある。女性側を診察する産婦人科医と、男性側を診察する男性不妊専門医(生殖医療に詳しい泌尿器科医)の人数が圧倒的に違うというのも関係している。個人の意識”だけ”の問題でもないんだけどね。
「男性不妊」を専門とする医師は、日本に多くいないのが現状です。日本生殖医学会によると、不妊治療の専門医は全国で467人、そのうち男性不妊を専門とする医師は41名(※数値は状況によって変化)のみと、1割にも達しません。
不妊原因は男女半々であっても診察できる医師が少ない。だから、男性側が診察するという認識すらない人もいるだろう。
(検査自体を拒否する男性もいれば、検査まではするけれど診察となると拒否する男性もいる。夫婦共に子供を望んでいても、そこはスルーみたいな。そして女性だけが病院に通い続ける・・・と)
結婚した当時の私も、まさか夫が診察をしなければ挙児が望めないとは想像もできなかった。自分がまず病院に行って検査を受けないと!と思っていたから。
でも、ここが難しいところなんだけど・・・、2人で努力しても、その努力がどれ程報われるかは誰にもわからない。不妊治療ってそういう世界なんだよ。だからこそ、1人で突き進んでいくのは孤独。2人で一緒に考えたり相談して進んでいくからこそ、絆が深まるんじゃないかなと思うんだけど。
私が望むのは、せめてその時がきたら
”俺も一緒に検査を受けるよ”
”俺も一緒に診察を受けるよ”
”2人の子どもを望んでるんだから一緒に頑張ろう”
・・・という感覚を最初から持てる人が増えること。
”え、何で俺?”って感覚が”古っ!”って突っ込まれるくらいになればいいなぁって思ってる。
”どうしたらいいか”と対策を立てる段階にもまだなってないような気がする。
そもそも現状が”どうなっているのか”すら知らな人がたくさんいる。
プライドが傷つくからとか、実際に妊娠する側じゃないからピンとこなんだよ、なんて言葉が前面に出てきて、”仕方ないんだよね”で思考が止まってる。
私はそれはおかしいと思っている。
だから、書いてる。
これからも、おかしいって思うことは書いていきたいと思ってる。